Physical Design
こんにちは、Golden Record、アートディレクターの大野です。
前回の「アイデンティティデザイン」に引き続き、事業領域についてお話ししたいと思います。今回は「フィジカルデザイン」についての解説になります。
フィジカルデザインとは、あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、一般的にグラフィックデザインの領域をもう少し広い視野で拡張した言葉として捉えていただくとわかりやすいかと思います。 フィジカルデザインの領域は、”グラフィックデザイン・ロゴデザイン・パッケージデザイン・ グッズデザイン・広告・ポスター・サインデザイン・イベントブース装飾・パンフレット・ DM・ブランドブック・アートディレクション・フォトディレクション・映像ディレクション”等、多岐に渡りますが、”アウトプット単体”ではなく”それを目にした時の体験全体”をデザインしているとして捉えている為、あえてこの言葉を使っています。

触れるデザイン、感じるコミュニケーション
メディアの発達とともにブランドが取り得るコミュニケーションは多岐にわたっています。
ロゴ、広告、パンフレット、パッケージ、web、SNSなど、多くのタッチポイントでコミュニケーションが発生していますが、ブランドの魅力を定着させていく過程であらゆるタッチポイントで一貫した表現を積み重ねていくことが効果的です。
たくさんのタッチポイントの中で視覚情報はもちろんのこと、聴覚や触覚、嗅覚など、複数の感覚が同時に刺激されることで、私たちの脳はより強く印象を形成します。例えば、印刷物の紙の質感や重み、音楽やナレーションの音色、あるいは香りなどが伴うことで、ブランドのメッセージはより立体的に、記憶の中に息づきます。
これは、脳が感覚の「総合体験」を通して情報を整理し、記憶をより強固なものとして定着させる性質に基づいています。単一の視覚的なメッセージでは、他の情報と混ざり合い埋もれてしまいがちですが、複合的な体験は独自の輪郭を持った「記憶のフック」となり、長く心に残り続けます。
ブランドにおける「体験設計」は、こうした複合感覚の活用によって、ブランドとユーザーとの間に感情的なつながりを生み出すものです。単に商品やサービスを伝えるのではなく、ブランドそのものを「感じさせる」ことで、ユーザーの心に深く刻まれるのです。
そう言った背景から私たちはその体験をデザインすることを「Physical Design」としてブランドのアイデンティティを形成していく上で大切にしています。

コミュニケーションの軸と豊かなディティールが生み出す「体験」
「体験をデザインする」というと、イベントやリアルの場をデザインすると言ったことをイメージする場合もあると思いますが、パッケージやパンフレットを手にとって眺めると言った行為も一つの体験です。
例えば印刷物であれば、そこに記載されている情報のみではなく、印刷の発色、紙の手触り、加工の質感、紙の擦れる音などなど。それを手にして情報を読み取る過程で、私たちは意識的/無意識的に多くの情報を得ています。その一つ一つは些細なこだわりににすぎないものですが、そのこだわりは着実に他ブランドと明確な違いを作っていくことに役立っていると確信しています。私たちがAesopの店舗に感動し、Appleの洗練されたパッケージに魅入られるのは、そこにこだわりの積み重ねがあるからに他なりません。
こだわりによる感情を動かすことのできるデザイン。「体験」をデザインする上で私たちが重要視していることの一つです。
そして「こだわり」とは何かをプラスしていくことだけではありません。高価な素材を用い、多くのアイディアを盛り込み、他のブランドがやっていないことをして、、、というのも大事なことではありますが
そう言った手法が取れるブランドは限られていますし、継続していけないことはブランディングにおいては大きな意味を持ち得ません。例えば高級な日本食のように厳選された素材と出汁と少しの調味料で構成される料理のように、例えばスープに命をかけるラーメンのように、それぞれの思想とコンセプトに合致したアウトプットを突き詰めていくことで感動を生み出すことは可能です。
ここでいう突き詰めるとは、ゴールに向かって最適な足し引きを行い自らの魅力を最大限引き出すためのコントロールを意味しています。大きな感動体験もささやかな高揚も。偶然の産物ではなく意図され設計されたもの。コントロールが可能であればあらゆる体験の局面で、その感動は再現可能なものになっていきます。
その状態に至るために過程が「Physical Design」と言えるでしょう。

広い視点で体験を継続していくための設計
ブランディングにおいて大事なのは同じ体験を継続していけることでもあります。それは同じ「体験」に継続して触れることで高価的にブランが定着するのを助けていきます。ブランドが統一された表現を行う本質は、逸脱した表現によるブランド毀損を避けることよりも、表現の効果を最大化しよりブランドを定着させていくためのものと思っています。
ブランディングにおいて「体験」をデザインするということは、
ミクロにおいては理屈を超えた魅力をディティールの探求によって発見し
マクロにおいては発見された魅力をロジカルに分解し、展開と応用が可能な状態にすることと言えるのではないかと考えます。
ブランドのアイデンティティに沿った形で展開される豊かなディティールが生み出す一連の「体験」。その積み重ねがブランドを強くし、人々の中で共有の概念を形成して、やがてそのブランドは文化に昇華される。私たちはその過程で「Physical Design」によって作られる「体験」を通して、ブランドの成長を支援しています。皆様の手がける魅力的な事業や商品・サービスを、どのような「体験」としてデザインしていくか。
一緒にそれらを練り上げることができる時を楽しみにしています!
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